裁判員制度はじまり裁判制度ほろびる

裁判員裁判の1審判断は国民の視点、感覚、知識、経験、健全な社会常識などが反映されたものとなる。(裁判官だけの)控訴審はこうした結果をできる限り尊重しつつ審査に当たる必要があり、<略>明らかな矛盾や事実の見落としなどがない限り、できる限り1審の判断を尊重する。

http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111101001102.html

裁判官の独立(憲法76条3項)とかいう規定が日本国には存在し、裁判官はそれには「拘束される」はずだが…。しかし人事権を握られている最高裁にこのように言われた以上、高裁の裁判官としては、よほどのことがない限り抗えないだろう。むしろそれなら上級審、要らなくない?と裁判員候補者の候補者である私は思うのだが。
だいたい、「量刑不当の問題もよほど不合理であることが明らかな場合を除き、1審判断を尊重する」と言っておきながら「死刑か無期懲役かが問題となるケースで、控訴審が1審と異なる判断を考える場合については慎重な検討を要する」って。「死刑か無期懲役か」も量刑判断でしょう。それとも、例えば懲役15年だろうと14年だろうと、そんな瑣末なことはどうでもいいからその辺は基本原審支持で、ということだろうか。そこでは刑事裁判の主役であるはずの刑事被告人が一顧だにされていない。

量刑判断では「破棄をあまり広く認めると当事者が1審をないがしろにして、2審で判断を求めることになりかねない」と懸念。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081112ddm001040005000c.html

報告書には本当にこう書いてあるのだろうか。と疑いたくなるほど、バカな「懸念」だ。
「当事者が1審をないがしろにして」
控訴を前提として1審をないがしろにするなどといった大胆かつ無意味な訴訟戦術が採られることがあり得るのだろうか。あり得ない。
1審の素人裁判を2審が破棄自判しまくったら裁判員制度の意義が危うくなるというのは、あくまで裁判員制度を外から眺める者の考えであり、この「制度」を推し進める人の「懸念」である。当事者(=刑事被告人)にとって目の前の裁判(官|員)がプロなのかアマなのかは関係ない。大事なのは判決と、その先の自身の運命だけである。「ないがしろ」になどできるものか。刑事裁判をないがしろにしているのは誰か。

一方、これまでは鑑定人が、無罪や減刑につながる心神喪失心神耗弱などと結論付けることも目立った。鑑定意見で明示されると、裁判員責任能力を判断する際に大きな影響を受けると指摘。鑑定結果は「重い精神障害で犯行に影響した可能性がある」などと医学的所見にとどめるべきだとした。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081112k0000m040080000c.html

あれ?裁判所は鑑定を尊重せよ、ではなかったの?
はてなブックマーク - http://www.asahi.com/national/update/0425/TKY200804250324.html(元記事がもうないため代用)

他にも判決文は簡潔に書けとか、何だかなあという感じの報告であった。そんなに不安なら、やめればいいのに。


そんな裁判員制度もいよいよ動き出し、11月28日ごろから通知が届くらしい。

※ 裁判員候補者名簿に登録されたことを公にすること(インターネット等で公表するなど,裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態にすること。)は法律上禁止されていますので,ご注意ください。

http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/08_11_28_saibanin_osirase.html

最高裁は一体何を怖れているのか、こんなふうに恫喝している。ここでの「法律上」は裁判員法第101条を指しているものと思われるが、

第百一条
何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

これは裁判員保護のためであり、本人が、しかも個人を特定できないような方法で公表する分には全然問題ないはず。だいいち罰則もない(はず)。なので、私にもし来たらここでレポートする予定。