マイナビ女子オープン延期の件

マイナビ女子オープンという将棋の公式棋戦がある。この棋戦の第2期の決勝戦(5番勝負)が、先月から今月にかけて行われた。この決勝、本来は4月から行われる予定であったが、直前に延期された。挑戦者となった女流二段の岩根忍さんの出産のためである。


公式発表(どちらも内容は同じ)
日本女子プロ将棋協会(LPSA)
日本将棋連盟


出産予定日が5番勝負の日程と重なってしまうことは事前に分かっていたので、第2局以降は延期、という話でまとまっていたようだが、予定より早くなりそうだということで、急遽、第1局から延期となったものだ。


結論だけ見ると、ごく当たり前の話。だが、ことはそんなに簡単ではない。将棋のタイトル戦は、ホテルや寺、美術館などの施設を使って、場合によっては一般客を集めて大々的に行われるものである。この第2期マイナビ女子オープンの第1局も、予定では倉敷での公開対局であった。受け入れ側としては、対局の延期は興行の中止を意味する。

このようなとき、他期戦ではどうなっているのか。トッププロの一人である竜王渡辺明さんが書いている「渡辺明ブログ」によれば、

竜王戦では第1局を指せないと失格になり、挑戦者決定戦敗者が繰り上がっての番勝負になる

マイナビ杯の延期など。 - 渡辺明ブログ

そうで、実際、このマイナビ女子オープンでも、挑戦者決定戦で敗れた中村真梨花・女流二段を繰り上げで挑戦者とするという話も出ていたようだ。


しかし、実際には第1局から延期となり、挑戦者決定トーナメントを勝ち上がった岩根女流二段が予定通り5番勝負に出場することとなった。
主催者、受け入れ側、対局相手である女王(「女王」はマイナビ女子オープン優勝者が1年間名乗る称号)の矢内理絵子さんの英断に拍手を送りたい。

そして何より、結果的には3連敗となってしまったが、出産を挟んでわずか8週間という、決して万全とはいえない調整期間で、おそらく現在女流では最強であろう矢内女王に対して、あれだけの面白い将棋を見せてくれた岩根忍女流二段に、最大の賛辞を送りたい。