小沢祭りを見ていて、マスメディアは何も変わりそうにないなと思った

2008年1月16日付けで、日本新聞協会が裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針というものを発表している。裁判員制度に向けて、今後の新聞報道のあり方を自ら示したものである。

捜査段階の供述の報道にあたっては、…(略)…内容のすべてがそのまま真実であるとの印象を読者・視聴者に与えることのないよう記事の書き方等に十分配慮する。

事件に関する識者のコメントや分析は、被疑者が犯人であるとの印象を読者・視聴者に植え付けることのないよう十分留意する。

日本で新聞メディアがはじまって少なめに見ても100年以上が経過し、戦後も60年以上を経て、いまだにこのような基本的なことをわざわざ発表しないといけない日本のマスメディアの状況には悲しい感じさえする。が、それでも、これから変わるんだという意思表示であるなら、期待して見ていようとも思っていた。


しかし、やはり、何も変わりそうもなかった。

ここでは朝日の世論調査を取り上げるが、見た限りではどこも似たり寄ったりなので、朝日を取り上げたことに他意はない。
朝日「緊急」世論調査

民主党の小沢代表の秘書が、西松建設の違法な企業献金問題で逮捕されました。小沢代表は、「企業からの献金とは認識していなかった。やましいことはない」と説明しています。小沢代表の説明に納得できますか。

まず「納得しますか」ではなく「納得できますか」という質問がすごい。もはや疑問ではなく反語である。
まあ、真実がどうであれ、「やましいことはない」と主張したい人が詳しい状況を説明できるはずがない。

小沢さんは、民主党の代表を続ける方がよいと思いますか。辞める方がよいと思いますか。

これも質問がすごい。
民主党の代表を続けるほうがよい」=「小沢支持」=「民主党支持」という根拠は何もない。公明党支持なので、小沢にはいつまでも代表の地位にとどまってマイナスポイントを稼いでほしい、と思っている人は「民主党の代表を続けるほうがよい」に○。政策的には当初の頃の民主党のそれを支持していたような人は、むしろ小沢には消えてほしいので×。
この質問によってどんな世論を明らかにしたいのか、まったく見えてこない。
ちなみに私は、「やましいことはない」のに辞めるというのは(選挙戦術として、などではなく法的な正しさとの関連で)説明がつかないので、私がどう考えるかにかかわらず彼は辞めることができない、に一票。


最後の質問。

小沢代表の政治献金をめぐる問題で、あなたの民主党に対する印象は、よくなりましたか。悪くなりましたか。それとも変わりませんか。

「小沢代表の政治献金をめぐる問題」と、問題が存在するという前提に立っているなら、わざわざ世論調査などしなくてもいいのに。
でもこの質問、噛めば噛むほど味わい深い。
…まあ、良くはならないよね。
そう考えるとこの結果は妥当。ちゃんと答える義務なんかないのに、みんなマジメだな。ぼくなら間違いなく「よくなった!」と即答。


無作為に抽出されてしまってこんな与太話に付き合わされた2000人弱の皆さん、ほんとお疲れさまです。


で、話を最初に戻して、結局はこのように検察・警察発表を右から左へ垂れ流す、政府・与党側の意向を代弁する、それに「コクミンの声」という大義を与えるために付加疑問的な世論調査が行われていくんだろうな、と思って、やりきれない気持ちになっている今日この頃です。