米国の対北朝鮮テロ支援国家指定解除に対する各政党の反応

アメリカ合衆国政府が11日、北朝鮮テロ支援国家指定を解除した。
それに対するマスコミの反応は、確認した限りでは総じて批判的であった。リンク先は代表で朝日。
「蚊帳の外」に置かれた日本 テロ国家指定解除
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それに対する各政党の反応。

自民

14日に行われた幹事長・細田博之氏の記者会見の質疑応答の一部分。党のウェブサイトより。

(質問)
アメリカによる北朝鮮のテロ支援国の解除について、幹事長の受け止めをお聞かせください。また、見方によっては、日本にとって重要な問題である、北朝鮮による拉致の問題が後退するのではとの懸念もありますが、お考えをお聞かせください。
(回答)
6カ国協議や日朝協議にしても、従来から2つの重要な論点がずっとある訳です。1つは国民の安心、安全に繋がる核開発の防止。現に核実験まで行っており、核兵器を一部保有して、それを撃つ能力があるかどうかは別ですが、これは非常に日本国民全体の生命に関わる大きな問題です。しかも、アジアの安全に関わる大きな問題ですから、これはこれで解決していかなければならない。新たなプルトニウム型の原爆を生み出す恐れのある、北朝鮮寧辺(ミョンビョン)にある一連の施設について、破壊をしたり、凍結したりするのは当然必要です。しかしながら、ウラン濃縮の問題があるかないかという問題もあるし、ミサイル開発の問題もあるし、さらに査察の問題など詰めていくことがたくさんある。アメリカがその点を重視したということは、1つの論点です。
わが国にとって、もう1つの同じくらい重要な論点は、拉致の問題であり、何人かの方々は帰国された訳ですが、非常に多くの方の拉致問題があると。これも一種のテロであって、これを解決していかなければならないということは、日本政府、日本国民にとって悲願ですから、これについても今後とも、追求の手を緩めたり、解決を遅らせてはならないということで、これからも各国の理解も得ていますから、強く交渉していく必要があると思っています。

http://www.jimin.jp/jimin/kanjicyo/2010/201014.html

ただしこれは政府として露骨に内政干渉テロ支援国家指定はアメリカ合衆国が独自に行っているものである)するわけにはいかないという事情もあろう。
しかし幹事長代理の石原伸晃氏や財務大臣中川昭一氏は批判の声を投げかけている*1
こういうとき、他党だと足並みの乱れとか何とかすぐ書き立てる*2くせに自民党だと許されるってのはどうなんだろう。

公明

時事通信によると

公明党山口那津男政調会長も「(拉致問題などに関する日朝)2国間の話し合いが進まない中では、6カ国協議再開を決めたこと自体、一定の評価をしなければならない」と語った。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008101200182

公式サイト上にコメント等は見当たらなかった。

民主

14日の定例記者会見において代表・小沢一郎氏。党のウェブサイトより。

 米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除についても「ブッシュ政権のやり方、筋道は通らない」と批判。イラク戦争では「ない」と主張する大量破壊兵器を「ある」といって戦争を開始、侵略、占拠しておきながら、その一方で核兵器の存在を認めている北朝鮮に対して弱腰な態度について、その矛盾を指摘した。「だからアフガンでも大衆の支持を得られない」と述べ、「大衆の支持を得られなければ政治は成り立たない。昔から言うように民を治めるのは軍を以ってではなく徳を以ってである」と強調した。

 これに関連して、「民主党が政権を獲ったときには日米同盟をどのように建て直したいか」との質問に対し、国連憲章と日本憲法の理念に従い、それに基づき対等でより強固な信頼関係をつくっていきたい」と表明。各国の利益を優先することはあるにせよ同盟国である以上、国際平和のためともに努力できる関係をつくりあげたいとの考えを述べた。

http://www.dpj.or.jp/news/?num=14278

社民

以下は6月26日の時点における党首・福島瑞穂氏のコメント。これも党ウェブサイトより。

 本日、北朝鮮が核計画の申告書を、中国に提出した。これを受けて、アメリカ政府はテロ支援国の指定解除を議会通告した。これは、6カ国協議の合意に基づいた行動であり、その内容に不十分で不完全な部分があるとしても、朝鮮半島非核化への一つのプロセスとして、評価しうるものである。

 米朝協議の進展は、朝鮮戦争が休戦協定に留まっている現状を解決していくためにも重要である。アメリカがテロ支援国の指定解除に踏み切ることも、その一環である。

 日本政府は、6カ国協議の進展を確認しつつ、日朝協議を粘り強く進めるべきである。

http://www5.sdp.or.jp/comment/2008/comment080627.htm

今回の指定解除への直接の反応は上で引用した時事通信の記事の

社民党阿部知子政審会長も、米国の対北朝鮮政策について「中途半端だ」と語った。

くらいしか見当たらず。何が中途半端なのかこれだけでは何も判断できない(とりあえず全党載せないと的な扱いなのが哀れといえば哀れ)が、何となく批判的な印象を受ける。すると6月の党首コメントと整合性が取れないので、早く何か発表して。

共産

12日の委員長・志位和夫氏の談話。党ウェブサイトより。

 一、米国政府は、十一日、北朝鮮核開発計画の検証方法について、申告した全核施設に加えて、未申告の核施設への立ち入りも、「相互の合意のもとで」すすめることなどで合意し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。わが党は、この動きが、朝鮮半島の非核化をめざす六カ国協議の合意の実施、北朝鮮核兵器の完全放棄につながることを、強く期待する。

 一、核兵器問題が、その解決にむけて道理ある形で進展するならば、日朝間の懸案である拉致問題の解決についても、その進展をうながす新しい条件となりうるものである。わが党は、日朝両国政府に対して、日朝平壌宣言にもとづき、核兵器、拉致、過去の清算を含む日朝間の諸懸案の包括的解決をめざす努力をはかることを求める。

 一、日本政府の対応としては、「『行動対行動』の原則に従い、意見が一致した事項について段階的に実施する」という、六カ国協議で確認された方法にもとづき、諸懸案の包括的な解決をめざす主体的な外交戦略をもち、事態の前向きの打開にあたることが重要となっていることを強調しておきたい。

国民新党

上で引用したものと同じ、時事通信の記事

国民新党下地幹郎政審会長代行は同番組で「ミサイル・核・拉致の3点セット(の解決)があって初めて解除があるべきだ」

公式サイト上にはコメント等見当たらず。

雑感

今回の指定解除について共産党がいち早く評価したことは特筆すべきである。だいいち拉致はテロではない。テロ行為は政治的な主張のために行うものである。北朝鮮政府は拉致について隠蔽し続けてきた。そのこと一つとってみても、あれはテロではない。ただの(といっては語弊があるが)犯罪である。


キュウキュウに締め上げる。そして屈服させる。
そうやって東アジアに平和が来る?
んなわけない。
いや、仮に百歩譲ってそうだとしても。

自死を決意した者と、あくまで自分は死ぬ気のない者とどちらが危険だと思う?」

引用元は死刑の話で直接的には関係ないが、これを
「体制の崩壊を覚悟した独裁者と、あくまで御身は安泰であると思っている独裁者とどちらが(隣国の民にとって)危険だと思う?」
と言い換えてみると、北朝鮮の扱い(「圧力」一辺倒の是非)についての答えは自明だと思う。

*1:http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2008101302000074.html。blockquoteだらけになってしまうので引用は割愛。

*2:そのくせ(無投票再選など)足並みが揃えば揃ったでまた批判。