懲戒請求の件で光市母子殺害事件の弁護団が勝訴

と、どうして書かないのだろう。どのニュースサイトを見ても敗訴側が主語に来ている。民事事件だから原告視点でもいいような気がするが。


さて。産経はこういうとき、判決要旨を長めに掲載してくれるので嬉しい。
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ちなみに、懲戒請求というのは弁護士法に定められているもので、だいぶ端折るとこんな感じ。

第56条
弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
第58条
何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。

被告が主張した「懲戒事由」は、上でリンクした判決要旨によれば

  1. 弁護団が被告人の主張として虚偽内容を創作している
  2. その内容は荒唐無稽(むけい)であり許されない

とのことだが、判決で

 しかし創作したことを認められる証拠はなく、被告の憶測にすぎない。また被告人の主張が不合理で荒唐無稽だったとしても、弁護人が被告人の意向に沿った主張をする以上、それは弁護人としての使命・職責を果たしたと評価でき、弁護士としての品位を損なう非行とは到底言えない。

とバッサリ。
また「原告らが一般市民や被害者遺族に対し、差し戻し控訴審で新たな主張をするようになった経緯や理由を説明すべきだった」との主張については、「そもそも弁護人がそのような説明をしなければならない法律上の根拠は全くない」と切り捨てられている。このあたりは弁護団安田好弘さんが著した 死刑弁護人 生きるという権利 (講談社+α文庫 (G175-1)) で説明されているので、少し引用。

二〇〇六年二月二七日。弁論間近になって、改めて旧弁護人に依頼されて、私と広島の足立修一弁護士がはじめて少年に接見した。旧弁護人も同席した。
事件から七年。少年は二五歳になろうとしていた。(略)少年は、開口一番、自分は強姦するつもりはなかったと訴えた。そして次の接見では、殺すつもりはなかったと殺意を否認した。旧弁護人も私たちも驚愕した。(略)少年の主張どおりであるとすると、殺人と強姦は成立せず傷害致死となる。(略)従来の弁護とは、あまりにも事態が異なる。

これ自体、事実であるかどうかは分からない。しかし、判決にも「憶測にすぎない」あるように、これを嘘だと断じることはできない。ましてや、そうした憶測によって弁護活動を制限する(=弁護している被告人の基本的人権も制限する)ことは許されない。


さらに、被告のこの主張には参った。

 橋下弁護士は、多数の請求がされた事実によって、原告らの行為が弁護士の品位を失うべき非行に当たると世間が考えていることが証明されたことになり、違法性はないと主張する。

さすが鼻くそ。十分に「弁護士の品位を失うべき非行」といえる論理展開であると思う。煽動政治家には向いていると思うので、一刻も早く弁護士資格を捨てて大阪府のカイカクに専念されたほうがよろしいかと。


なお、判決は次のようにも述べている。

請求する者は請求を受ける者の利益が不当に侵害されないように、根拠を調査・検討すべき義務を負う。根拠を欠くことを知りながら請求したときには不法行為になる。

6000人を超える懲戒請求者のみなさん! 根拠のない正義を振りかざしていると、不法行為で損害賠償請求される可能性がありますよ。