自殺という問題は「社会の中核」にとってあまりに遠いのか

自殺3万人 詳細データを施策に生かせ(6月22日付・読売社説)
ひどい。詳細データを社説に生かせ。まぁ、

世の中が嫌になったのならば自分ひとりが世を去ればいいものを

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20080610-OYT1T00032.htm

一面で自殺を推進しちゃう新聞に期待しても無駄か。
さて中身。

自殺者を世代別でみると、30〜40歳代で前年より増えたのが特徴だ。この世代で全体の3割を占める。社会の中核となって働かなければいけない人たちが、なぜ人生をなげうつのか。

何やら30代40代が突出しているかのような印象を受けるが、実際は警察庁の自殺者数統計で分かるように、そんなことはない。むしろ総人口比15%弱で総自殺者数の2割以上を占める50代、あるいは60歳以上のほうに偏っていると私には読める。私にそう読めるだけでなく、社説内で言及されている自殺総合対策大綱も「中高年、特に男性は、自殺者急増の主要因」と指摘している。読めよ社説子。
さらに社説は「社会の中核となって働かなければいけない人たちが、なぜ人生をなげうつのか」と続ける。そうやって周囲が過度の負担をかけるから死んでしまうのでは、と書きながら気づかなかったのだろうか。


そして唐突に

今年に入って硫化水素自殺が増えている。背景にあるインターネット対策も課題だ。

という一文が入る。文章全体で、この一文がかなり浮いている。どうしても入れたかったのだろう。分かるなあ。全体の論と全然関係ないんだけど、でも書きたいってこと。でも社説子が書いているそれはmixi日記ではない。社説だ。論を組み立てられないなら自重しろ。
それはさておき、「硫化水素自殺」の問題の本質は「硫化水素」のほうではない。「自殺」のほうである。インターネット対策が必要かどうかは措いておくとして、自殺対策としてインターネット規制をするのは、あまり意味がない。


なんていうか、全体として、自殺問題に対するあまりの他人事っぷりに唖然とする。全部「○○には、△△してほしい」なのである。そこにはマスメディアの一員としての反省も考察もない。
こうした他者に対する徹底した無関心が、年間3万人を超える空しい死を惹き起こしていることに、気づくべきだ。私も、あなたも。