じゃあ僕らは全員死刑ですね。
死刑の是非は三つの選択肢を示して尋ねた。「場合によっては死刑もやむを得ない」を選んだ容認派は85.6%で、2004年の前回調査から4.2ポイント増。「どんな場合でも死刑は廃止すべきだ」とした廃止派は5.7%で0.3ポイント減だった。「わからない・一概に言えない」は8.6%で3.9ポイント減だった。
死刑「やむを得ない」過去最高の85.6% 内閣府調査
きったねぇ世論調査だな、という感じ。例えば「ベネッセが食育について調査しました!」だったら、ある程度偏った選択肢が提示されてもしょうがないと思うけど、内閣府がこんなあからさまな世論誘導しちゃマズイでしょ。
誘導であることが分かりやすいように「死刑」という単語を除くと、
- 場合によっては○○もやむを得ない
- どんな場合でも○○はやめるべき
ほら。ほとんど1番でしょう。
だいたい、この「場合によっては」の「場合」とはどんな「場合」なのか。それが一切示されていないので、これは現状の日本の死刑制度の是非を調査したものではなく、死刑というシステムそのものの是非を調査したものであることが分かる。ゆえに、ここから読み取っていいデータは「日本の現状の死刑制度は85.7%の人々によって支持されています」ではなく、「死刑廃止論者は5.7%います」でしかない。…いやこれでも結構ショッキングなデータだけど。
以上を踏まえて、本当に世論を調査する気があるのなら、現行の死刑制度について概説したうえで
- 死刑をもっと積極的に出すべき
- 死刑制度は現状のままでよい
- 死刑については今より慎重であるべき
- 死刑は廃止すべき
ぐらいにすべきかと。今回の調査では1〜3が「容認」、4だけ「廃止」となり、どう見てもフェアじゃない。
そして一番問題だと思うのは、こうしたいい加減な調査をもとに、「現在の日本の死刑制度は国民のみなさんに支持されています」というありもしない結論を政府が出し、現状の死刑制度に関する一切の問題を放置してしまうということだ。
たとえば 日本の死刑囚、精神障害を発症する危険 アムネスティが報告書 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
他にも、外の人との接触が極端に制約されているなど、問題の多い制度であるにもかかわらず、それが全くといっていいほど周知されず、隠されている。死刑自体は憲法も容認している*1が、このような死刑囚の処遇は法的に何ら根拠のあるものでなく、与党はすぐにでも政治日程に乗せるべきである。
現状の量刑相場によれば「2人殺せば死刑」らしい。
昨年1年間で僕らは7人の人間を殺しました。
僕らは全員死刑。やむを得ない、ですよね?
*1:31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。